押絵羽子板の買い方

■賢い羽子板の選び方
押絵羽子板には一般的に男物と女物と呼ばれる2種類があります。 この男物というのは、「狂言物」ともいわれ、歌舞伎狂言を題材とし、役者が見えを切ったときの表情や仕草を躍動的に描いたものです。衣装の絵柄も豊富で、羽子板の中に忠実に役柄の特徴を表現しています。 「見立て物」は、歌舞伎舞踊の中から若い女性の舞を表現したものです。特に、「藤娘」「汐汲」「道成寺」「朝妻」「八重垣姫」は、『見立五番物』といって知られ、女児が生まれると、初正月に健やかな成長を願って実家や親戚 から贈られる縁起物として用いられています。また、この他にも浮世絵風の美人を描いた「浮世絵風」、目の細い日本画風美人を表現した「松園風」があります。 男物は不景気をはねのける縁起物として、女物は祝い物として飾られています。 顔は描く職人によって様々な表情が描きだされます。この辺りが器械で作られたものと一味違うところで、本物の押絵羽子板は無数の顔、雰囲気をもったものが仕上がるので、じっくり顔をのぞいて気の合いそうな羽子板を選びましょう。 羽子板は歌舞伎の歴史と共に発展を遂げてきたという歴史をご存知の皆さんには「役者物」もおすすめです。歌舞伎役者が見えを切ったときの表情や仕草を躍動的に描いたり、実在の役者の顔を似顔絵風に描いた「役者物」は、歌舞伎を見た事のある人もない人も、その躍動感にきっと驚くはずです。好きな場面 の羽子板を選ぶのもよし、毎年出される様々な場面をそろえるのも楽しみの一つとなっていますよ。

■プレス羽子板
プレス機によってつくられる、押絵羽子板を模倣したプレス羽子板が狭山市で作られるようになりました。布をダンボール紙に貼り付けてプレス機で熱を加えて作られます。押絵に似た半立体の装飾的な羽子板で、大量 生産が可能な為安価で小型のものを中心に増えてきました。

■羽子板を買ったら手締めをしてもらおう
さて、羽子板市会場では景気のよい手締めを聞いた事がありませんか? せっかく高価な押絵羽子板を購入するのですから、縁起物ですし景気良く手締めをしてもらいましょう。しかし、手締めをしてもらうには売り子さんとの駆け引きが欠かせないのですよ。 ますは、気に入った押絵羽子板をじっくり選びましょう。そして、選んだ羽子板の値引き交渉を楽しんでください。 値段が決まったら買いましょう。ここからが大切なところです。 羽子板職人の元では若い衆が修行を行っています。店主はいつも苦労している若い衆たちに羽子板市の時ぐらいは、少しご馳走をしてあげたいものです。 そこで、値切った分またはそれ以上を、ご祝儀として渡しましょう。 これで、間違いなく若い衆も参加しての盛大な手締めとなるでしょう。 若い職人にとっても修行のはげみになります。